HIROSHI WATANABEがkaito名義で新作を2022/10/7リリース。 “afterlife”オタレコようすけ管理人全曲解説。

 

kaito afterlife
kaito afterlifehttps://hiroshiwatanabe.bandcamp.com/album/afterlife

HIROSHI WATANABEがkaito名義で新作を2022/10/7リリース。 “afterlife”オタレコようすけ管理人全曲解説。

Kaito a.k.a. Hiroshi Watanabe(以下:kaito)の新作が2022/10/7に発表された。
kaito名義でタイトルは”afterlife”。
こちらからどうぞ

最近のkaitoの動きがすごい。

尋常じゃない。

2022年5月6日リリースの長編アンビエント、シネマティックサウンドスケープ“SILENT WORLD”。

そしてさらに、2022年9月2日にリリースされた”Summer Dream”。
夏を想起させる様々な模様を8曲の中に詰め込んだビートレスアンビエントアルバム。


この短期間に異常なスピードでリリースされているなかで今回の2022/10/7に発表された新作“after life”。
トラックリストは以下の通り。
1.Modulation Sky 05:56
2.Neutral Clock 04:44
3.Moonlight Dance 08:07 ビデオ
4.Autumn Transition 07:02
5.Momentary Lapse 02:09
6.Quiet Departure 03:50
7.Land Breaze 05:46
8.Brighter Than Light 03:05
9.Forest City 02:00
10.Sacred Nightlight 05:59
11.Behind The Sun 08:09
12.Sonic Waves 12:40
13.Moonlight Dance (original mix) 19:54

13曲の大作となっている。

本作”afterlife”は、
前作”Summer Dream”から続く一つの流れでもあり、
物語が続いているようでもあると思ってます。
今回のアルバムタイトルafterlifeとはいわゆる来世や死後を意味したものではなく、今生きてる現在へ、強く意識を向ける為に付けたもので、逆説的に使ったことを伝えておきたいと思います。

ノスタルジーな音像にビートを乗せたものや、ビートレスな様々な心情を映し出すかのようなアンビエントな世界、目に見えるものや起こりうる出来事は音楽によってどんな風にも組み換える事ができると僕は思ってます。

このアルバムには沢山の感情や情景が仕込まれいるので、是非ともその世界に浸ってもらいたくて、
この一ヶ月間、丹精込めて制作をしてきました。

ビート入りの曲を含む全13曲のニューアルバム、”afterlife”ぜひ聴いてみて下さい。

 

というメッセージとともにリリースされた今作。
以前このブログでレビューした

NOKTON(2019/12/4リリース)以来のレビューを書いてみようと思う。(全く頼まれてないけど。要するに書きたくて書いてるだけ。)

レコード屋魂を燃え上がらせるkaitoの作品

私が創業したOTAIRECORDはRECORDと名がつく通りレコード屋から始まっている。
私はレコード屋という職業を本当に楽しい職業だと思っている。
生まれ変わっても、もう一回やりたいと思う。

その理由はすごく単純だけど音楽をたくさん聴けるから。

音楽を聴いてかっこいいと思う曲を第三者に紹介する。
それが、多くの人に認められれば、たくさんレコードが売れる、という職業である。

その時の快感と言ったら最高で、自分の感覚が世の中に認められた、、ような気がするのである。

多くの人が自分の感覚を他者に認めてほしい、いわゆる承認欲求を持っている。

承認欲求というと、最近ではSNSだったり動画配信なので、いいねがついたり、多数閲覧がされることで満たされる事がある。

それらは直接承認であるが、レコード屋の場合は他社の作品をピックアップして、論評もしくは評価、ピックアップし販売する。
いわばキュレーションということになる。間接的な承認ということになる。

キュレーションという行為は、当然ながら自分の感覚が命となる。
だから当事者ではないけれど、自分の感覚をさらけ出す行為で、それが否定されると落ち込むし、認められると、この上なくうれしい。

そんな風だから、他者の作品をちゃんと自分が紹介するときは大変慎重になる。

レビューを書くときは、自分の感受性を全開にして作品を聴く。
もちろん付帯情報なども見ながら書いたりすることもあるが、それだけではだれが書いても同じだから、表現にはならない。
音楽作品のレビューは圧倒的な主観があって初めて成立するものである。

それは表現の自由に甘えに甘えていて、主観だから筆者がどう感じようが自由だろ、、って感覚に甘えるわけだ。

今回レビューするkaitoの作品は毎回、主観を全開にしてレビューしたくなる、、、いわばレコード屋の職業病を発病させる力がある。

kaitoの作品は主観を全開にして感じたくなる魅力がある

kaitoの作品の魅力の一つに、主役が常に聴き手であるという事がある。

ここが非常にポイント。

kaitoは自分の生きざまや心象をトラックに落とし込んでいく力が圧倒的なのだ。
だから、作品としては個人的で内省的な作品も多い。

今自分はこう感じている。
今自分の立ち位置はここだ。
こういう世界があったら素晴らしいだろう。

どんどん、迫ってくる。

それは圧倒的に個人的な感覚である。

上に書いたようにそれがなぜ聴き手が主役なのか?

それは、kaitoがあまりにも心象をさらけ出してくるから、同じ人間として、こちらもさらけ出さなければならない、という風に思わされるからである。

聴き始めは、kaitoはこういうサウンドスケープを持ってるんだ、と客観的に一歩い引いて聴き始めるのだが、あまりにも生々しく描かれる心象やサウンドスケープに、こちらがkaitoの感覚に引きずり込まれていくのである。

kaitoのサウンドスケープと自分がセッションしていく[afterlife全曲解説]

afterlifeのオープニングを飾るModulation Skyを聴き、どんどん引き込まれていく。

各々が日々いろんな暮らしをしていて、それぞれのフィールドで頑張って生きている。
毎日頑張って生きている。
その中でアート作品に触れるという事は非日常に触れるという事であり、リフレッシュしたり、感覚を取り戻したり、精神的に癒されたりする行為である。

そういった意味でのアートを求める人々を音楽に引き込む場合は、短時間で非日常空間に引き込めるかがカギである。

Modulation Skyはまさにそれに成功していて、聴き始めて、数分で、kaitoというサウンドスケープの住人になってしまう感覚がある。

2曲目のNeutral Clock でさらにそのサウンドスケープの入り口に入場していく。
1から2の流れ没入感は半端なくスムーズで、この時点で勝負ありである。

そして3.Moonlight Danceでは力強いビートがあらわれて、この作品の本体がお目見えする。

そうやってkaitoのサウンドスケープに入国して、kaitoの極端に個人的な世界と、自分の感覚が融合されていく。
もうこの時点で、kaitoとリスナーはセッションを始めていく。

そのやり取りが圧倒的に気持ちが良い。

あなたは堂々とkaitoとのセッションを楽しめばいい。音楽に身を任せるのではなく、あなたが主役になっていく感覚をもてばいい。

Moonlight Danceが徐々に進んでいくと中盤から後半に進むにつれてタイトな緊張感をもつはずである。
楽曲の展開もシンプルだし、ビートパターンが大きく変わるわけでもない、それでも、これだけの展開を描けるのはkaitoの名人芸と言えるだろう。

4のAutumn Transitionでは、3と打って変わって、メロディアスなループが印象的である。
逆回しやところどころにキーチェンジや不協和音、細かいPANの設定、ADSRを駆使した緊張感の演出、自然だけど計算しつくされたディレイタイム、、、電子音を用いながらアナログ的な人間の鼓動、自然の在り様などを描写していく、、、kaitoのアーティストアイデンティティそのものといった名曲がここで登場する。

破滅的、不安定と見せかけてとてつもない包容力を表現したトラックは限りなく人間的だ。

Autumn Transitionで、緊張が最高潮に達した後の5曲目のMomentary Lapseで落ち着いた世界が広がっていく。
個人的にはAutumn Transitionのまま次のトラックもさらに上がっていったら精神が持たなかったかもしれない。

Quiet Departureはそのタイトルの通り静寂からの胎動を感じさせるここ近年のkaitoのビートレス、アンビエントススタイルの面目躍如と言えるトラック。

何層もの音が重なりそれが大きな力に変貌し大きなうねりとなっていく美しい作品。

7.Land Breazeに移行するとまずは狂暴ともいえるくらいの深い低音に、自分自身の鼓動が共鳴させられる。
Quiet Departureからの再出発した世界は、力強くも繊細でクールな世界。
トラックメイク的に言えばこのトラックの低域の作り方、切り方は絶妙である。
kaitoの作品を聴いていると圧倒的に没入してしまうことがほとんどなのだが、ふと我に返る瞬間がある。
まさにトラックメイクのLand Breazeの低音のバランスとり方って面白い、、とかテクニカルな事を考えてしまう瞬間があるのだ。

8.Brighter Than Lightは新しいLandに迷い込んだ旅人が見つけた一筋の光を表現しているかのような、救済的な楽曲。
それは宗教的ですらあって、事実パイプオルガンテイストな音色を使い、それがポリフォニックに相まみえて、まさに光の階段のような風景が表現されている。

Land Breazeの低域には恐れ入ったが9.Forest Cityの低域の歌わせ方も非常に雄弁で、kaitoの元々のアカデミックな音楽的な素養が見え隠れするような印象がある。

アルバムも後半に差し掛かった10.Sacred Nightlightではシンプルで変化の少ない1本筋の通ったトラック。
その1本の筋に低域に新しい音が包容する。シンプルな展開ではあるが、細かい音の変化が緻密で後半に行くにしたがってカラフルなトラックではないかとすら感じさせるのがkaitoの表現力のすごさを証明しているのではないだろうか?

11.Behind The Sun。今作の中でも若干ノイジーでざらついた感触があるトラック。
kaitoのトラックを聴いているとたまに手触りを感じることがある。このトラックでは低域がバラエティ豊かに動き、実は低域が主役となったトラック。
色んなリズムパターン、メロディで入ってくるベースの仕上げが興味深い新鮮な感覚で聴けた一曲であった。

12.Sonic Wavesは12分を超す大作。もはやここまでくると、オペラのようにすら思えてくるプログレッシブな展開。
kaitoの作品構成力能力の高さを評価せずにはいられない。

そして作品の最後を締めくくるのが13.Moonlight Dance (original mix) 。4の同タイトルのフルヴァージョン、という会うとトラック的な意味で最後に収録されたものではないことは、アルバムをしっかり聞いたリスナーであればわかることだと思う。
kaitoが描いたランドスケープに入りいつの間にか主人公となったリスナーがそのまま世界を出ることなく、また新しい旅に出ていく、それは今のkaitoの心境を現すかの如く、2022年の冬支度ともいえるトラックである。それはポジティブで冒険心にあふれているのである。

kaitoはどこまでもリアルで真剣に生きている

私は以前からkaito,HIROSHI WATANABEをアーティストとしてリスペクトしている。
私自身の経営するOTAIRECORD MUSIC SCHOOLでも講師として加入いただいているくらいだ。
それをきっかけにkaitoとは音楽論や作曲論、アーティスト論などしばしば勉強させて頂いたり、僭越ながら私の考えをきいてもらったりしている。

今まではアーティストと1ファンという立ち位置であったが、今までよりグンと距離を縮めさせていただき接するようになってわかったことがある。

それはkaitoは、天才ではないということである。いや、結果天才なんだが、天才に至るまでの過程が恐ろしく泥臭く感じるのだ。
ちゃんと逃げずに自分と向き合って、自分が想ったことを丁寧に泥臭く、音楽や写真で表現する。
ここ数年のkaitoは自分が存在する意味を音楽を通じて表現しているとすら感じるくらいだ。

ここ数年のkaitoの作品を時系列で聴いてみるとさらに面白いです。

kaitoが何を感じて何に傷つき、何と戦って、どこを目指しているのか、はっきり言ってそこまで深く話していないし、プライベートなことはあまり知らない。

しかし、定期的に会うたびに、ここ数年どんどんアーティストして力強く、さらに根を深くして大地に立ち、進んでいく感覚がある。

それは作品とともにまるで個人的な記録のように生々しくここ数年の作品は連続したストーリーを感じでしまう。

口で言い表すと陳腐になってしまうので、どうか皆さん、今作だけでなく、ここ数年のkaitoの作品を時系列で聴いてみることをお勧めする。

再び引用するがkaitoは下記のように語っている。
*****
今回のアルバムタイトルafterlifeとはいわゆる来世や死後を意味したものではなく、
今生きてる現在へ、強く意識を向ける為に付けたもので、逆説的に使ったことを伝えておきたいと思います。
*****
コロナや戦争があったり、銃撃もあった。
とんでもなくうごめいている混乱した世の中において、kaitoは音楽を通じて力強く歩き出している。
自分の進む方向性を完全に見出した力強さがあるのだ。

ここ最近の間髪入れずのリリースラッシュでは、kaitoの生命力、躍動感、そして、なによりも希望が表現されている。

kaitoは希望を見出している、皆さんはどうだろうか?

kaitoの作品を通じて、一人でも多くの人がより力強く人生を歩いていけばいい。
混迷する世の中でも前を向いて歩くしかない。今の世界をkaitoと共有して歩いてみるのは悪くない選択である。

最後に宣伝させてください。

というわけで、kaitoの全曲レビューしてみました。
Nokton以来のレビューだったけど、kaitoの進化にはほんとまいりました。

いつもはヒロシさんって呼んでるんだけど、やっぱり、どこまで行ってもヒロシさんはかっこいいなって。

だから、レコ屋としてレビューを書きたくなっちゃうんです。
ヒロシさんが超真剣に作ってくるから、呼応しちゃうみたいな。

で、ヒロシさんも完成したらすぐ連絡くれるんです。ようすけ君聴いてよ!みたいな。

本当にありがたいなって思います。

ただ、デジタルリリースだからOTAIRECORDとしては売りだねがないので、、そこは商売人なので、、w。

だからちょっと最後に宣伝させてください。
宣伝といっても動画です。kaitoことHIROSHI WATANABEとOTAIRECORDがコラボした動画を下に貼っておきますので、良かったらご覧ください!

あと何度も貼るけど
渋谷のOTAIRECORD MUSIC SCHOOLでHIROSHIさんの作曲のクラスやってますんで、良かったら無料体験もありますので、ぜひお越しください!
っていうかこんながっつりリリースしてるアーティストにめちゃくちゃ内容深く教えてもらえるなんて正直天国です。。。

ってことで、ヒロシさんいつもありがとうございます!
皆さんもう一回言っときます。アルバム是非下記から聞いてください。
kaito”afterlife”

今回も素敵なアルバムをありがとうございました!

2022/10/11 オタレコようすけ管理人