坪口昌恭さんの著書『神曲のツボ! 「カッコいい」の構造分析』のトークイベント2023/1/8 at fab cafe nagoyaレポート
以前イベントでご一緒させてもらって以来懇意にさせていただいている大和比呂志さんにお誘い頂き、坪口さんの出版記念のトークイベントに聞き手として参加させていただきました。
以前告知ブログでも記載した様に、坪口昌恭さんのの著書『神曲のツボ! 「カッコいい」の構造分析』の内容がかなり楽曲に切り込んだ内容で素晴らしいものだったので二つ返事でお役目をお受けした。
場所は以前お世話になったfab cafe nagoya。fab cafeのサイトウ君は色々音楽に対して理解がありその姿勢にリスペクトせずにいられない存在。
当日はオタイの北名古屋本店で仕事をこなして、夕方に現場入り。
既に大和さんはいらっしゃって、配信用のカメラや音響のセッティングをされていた。
横浜からわざわざお越しいただき頭が下がる思いだった。
しばらくして坪口さんが会場入り。
北陸でツアーをこなしてからの名古屋入り。
金沢から名古屋って、近い様で意外に遠く3時間くらいはかかるのだが、お疲れの様子もなく明るくお元気な表情と共に現れた坪口さん。
トークショーについては題材だけ話をして後は一切打ち合わせはなし。
でも、私は1ミリの不安もなく、打ち合わせも、3分もなかったのではないだろうか。
坪口さんの様に登壇し慣れてる方の場合は、トークショーの類の場合自分はなるべく事前の話し合いはなるべくしない様にしている。
なぜならばお客さんも初めての方が多い場合は、なるべく同じ目線でリアクションをしたり質問したりしたいからだ。
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いよいよトークショーが始まる。
例外なくドキドキするのだが、坪口さんが口を開いて、数秒で、安心した。
一度ズームでもお会いしていたので安心はしていたが、自分はほぼ必要ないのではないかというくらいスムーズなトークは流石の一言でした。
内容は
チャーリーパーカーからきゃりーぱみゅぱみゅ、マイルスデイビスからビョークまであらゆる楽曲を坪口さんの視点で楽曲分析していく。
目の前に鍵盤を置いて坪口さんの自ら実演を交えながら解説していくスタイル。
ただ口で説明するのとその場で弾いて聴かせて解説するのを比較すると説得力が全く違う。
坪口さんの鍵盤のスキルは言うまでもないけど、音楽を聴きながらお客さんと共有する時間というのはやはり何者にも変え難い素晴らしさがあった。
各楽曲の構造分析に関してはその楽曲を生み出したアーティストの背景も交えながら実に深い考察と卓越した音楽理論と経験豊富な坪口さんの雑学なんかも交えながら進んで行った。
コード解析、リズム解析などを中心にミュージシャンならではの楽曲批評で私も大変勉強になった。
目からうろこの連続であった。
元々私の所属しているOTAIRECORDはCDの販売から派生して作られたものだ。
CD屋、レコード屋はある意味音楽の評論家に近いものがあって、人様の作った楽曲を***だからかっこ良い、***だからおすすめです、といった類の評論を毎日のようにしている職業だ。
私も例にもれず、若いころから様々な作品を批評してきたが、坪口さんのように、真正面から楽曲の構造に対峙して分析をするというスタンスは、とても新鮮に感じられた。
それは同じミュージシャンでしかも卓抜した経験と知識がないとできない視点であり、トークショーの最中も雷に打たれっぱなしの時間であった。
個人的な感想として、自らもっと音楽の勉強をしないといけないと危機感すら覚えた時間だった。
お客さんも真正の音楽好きばかりが集まっており会場も非常に集中してあっという間の時間であった。
またイベントが終わってからも坪口さんに質問が集まって、大変な熱気をもってイベントは無事終了しました。
「何でも長いことやっていると勘違いしてしまう。」
私は坪口さん、そして坪口さんの著作に出会って、自分の音楽に対するスタンスを改めさせられた。
20年以上音楽の仕事をやってきた中で、どこかで知ったつもりになっていたのではないか、と反省させられた思いだ。
坪口さんはジャズミュージシャンでありながらも、楽曲を分け隔てなく取り上げ、自らの経験と知識により『神曲のツボ! 「カッコいい」の構造分析』を出版された。
そこには色眼鏡がほとんどなく、あるのは楽曲と坪口さんの感性というフラットな構造である。
フラットな視点で見てみると、流行りもマニアックも、過去も現在も全く関係がない。
楽曲ストリーミングが解放されて、あらゆる世界の音楽が今日手軽に聞けるようになった。
爆発的に情報量が増えた昨今の音楽ファンにとって坪口さんの様なフラットな視点が今まさに必要なのかもしれないと感じた一日だった。
オーガナイザーの大和さん、fab cafeの斎藤さん、そして、素晴らしい解説をしてくださった坪口昌恭さん、お越しいただいた多数のお客様に大変感謝します。
ありがとうございました。