常に前衛的で、DJの意見を反映し続けたDJギアブランド「Vestax」。Vestaxの数々のプロダクトを振り返ってみる。
OTAIRECORDミノルです。
2014年、世界中のDJに惜しまれ終わりを迎えた日本が誇るDJギアブランド「Vestax(ベスタクス)」。
世界中からDJの声を集め、反映し、DJシーンに力を注ぎ続け、常にワクワクさせてくれたVestaxのプロダクトの数々を、今改めて振り返ってみたいと思います。
■PDX-2000
数あるVestaxのターンテーブルの中でも、DJ用途で爆発的な人気となった初期モデルがこちらのPDX-2000。驚異的なハイトルク、針飛びがしにくいストレートアーム、±50%まで可変可能なULTRA PITCHなど、怪物的ターンテーブルでした。
私もこのPDX-2000を使っていました。一生懸命練習してクラブでプレイした際、設置されていたのがTechnicsのSL-1200シリーズで、針は飛び、トルクはこれに比べて弱いので、全く思うようにプレイできず肩を落として帰った記憶があります。
そういったこともありターンテーブルはTechnicsのSL-1200シリーズが現場標準となっていましたが、今でも使用している方はたくさん見えますし、本当に素晴らしいターンテーブルだと自信を持って言えます。
■PMC-05Pro
HIPHOPミキサーと言えばコレ。クロスフェーダーカーブ調整が可能、-12dBの2BAND EQ。今の機種と比べるとたったのこれだけとも言えるシンプルなミキサーですが、当時は誰もがこのPMC-05シリーズ(後継機種含む)をこぞって使用しました。Technics SL-1200シリーズとPMC-05シリーズの組み合わせは唯一無二のHIPHOP クラシックだったと言えます。
■CDX-16
メディアがCD全盛期となる頃数々のCDJが発売されましたが、特に前期によく目にしたのがこちらのCDX-16。1つ前にはCDX-15という機種も存在し、蓋を手動で開けてCDをセットする作りでしたが、蓋はガラス、フロントにはウッドパネルが用いられるなど、デザイン面でも素晴らしかったです。
HIPHOP DJがレコードでDJする中、ロックDJはこの機種にお世話になった方も多いと思います。
■CDX-05
超ベストセラーCDJと言えるCDX-05。スロットイン方式を採用し、スクラッチが可能。MASTER TEMPO・HOT CUE・エフェクターを内蔵するなど革命的な機能を実装し、手の届く価格帯で飛ぶように売れました。まさにCD全盛期のタイミングで、DJをやってみたいという方にとってアナログターンテーブルはなんとなく物々しく敷居が高そうなイメージがありましたが、コンパクトで機能的なCDX-05は“趣味でDJ”を一気に広めた立役者的存在でした。
TASCAMのTT-M1(写真下)と組み合わせて使うことで、アナログターンテーブルの操作性でプレイが可能だった点も、今で言うところのPHASEくらい衝撃的で、操作性も素晴らしかったです。
■handytrax
今でこそポータブルスクラッチなどで使用されていますが、当時はそんな発想は無く、乾電池駆動が可能でスピーカーを内蔵した、持ち運べるレコードプレーヤーでした。蓋を閉めればカバンのように持ち運べるデザインもよくよく考えるととんでもないアイデアだったと言えます。
RELOOPのSPINはこのhandytraxに敬意を表する形でデザインされています。
■QFO
“UFO+Q-bert=QFO”というネーミングで、スクラッチの神様と言われるDJ Q-bertとの共同開発で生まれたターンテーブル。クロスフェーダー、ボリュームフェーダーを搭載し、右利きでも左利きでも使えるよう、左右対称の形となっています。
冒頭で紹介したPDXシリーズの中でも“Pro”と付く型番に採用されていた「A.S.T.S(Anti Skipping Tone-arm System)」を採用。本体を斜めにしても針飛びしないというところがポイントで、Q-bertが座り、膝の上に乗せてスクラッチしている映像が印象的です。年々レア度を増し、高額で取引され続けています。。。
■PMC-CX
こちらもQFO同様、海外著名DJとのコラボレーションにて開発された「PMC-CX」。DJ界のレジェンドとも呼ばれるハウス・テクノDJの重鎮、カール・コックスとのコラボ開発ミキサーです。
フィルターには真っ赤なアルミ削り出しのノブを。そしてEQにも極太ノブを搭載し、VUメーター、アイソレーターなど、全部入り高音質アナログミキサーといった製品で、どこまでも細かなニュアンスまで再現出来るスペックと言えます。
■R-3
ラックマウント式のロータリーミキサー、Rシリーズ最後のモデルです。この頃Vestaxはクラシカルなアルミパネルデザインから、黒を基調としてオレンジなどのカラーを差し色に使い、CUEスイッチも押すと光るなど、視認性の高いデザインに変化が見られます。
操作性、視認性、回路、音質など細部にわたり徹底的に詰められた、アナログミキサーの頂点とも騒がれた名機です。
■GUBER CM-01
DJ機材のみならず、“GUBER(グーバー)”というインテリアを意識したプロダクトもありました。本体をはみ出すように目を引くプラッターはガラス製。白を基調としたかなりデザインで、アンプやスピーカーも開発されました。とても素晴らしいデザインで、今も探されている方見えると思います。
■VCI-100
時代の転換期をワクワクさせた製品。初めて完成されたPCDJコントローラーが出来たとDJ界が湧いた「VCI-100」です。
VCI-100にはオーディオインターフェースは内蔵されていませんでしたが、パッと見てすぐに理解できるパネル配置はさすがDJを知り尽くしたブランドだと改めて思わされます。今現行で販売されているDJコントローラーとほぼ同じじゃないですか?この頃すでにVCI-100はPCDJの在り方を確立させていました。とにかく作りが重厚で、重たかったですね。もちろん良い意味で。
■TR-1
PCDJコントローラー繋がりで紹介せざるを得ない名機「TR-1」。KAITO、TREADとしても活躍するHiroshi Watanabe氏との協同開発により生まれたPCDJコントローラーです。TRAKTORの操作に特化した配置設計、60mmのロングフェーダーの採用、そしてVestax印のシャンパンゴールド。優れたデザインは年を重ねるごとに魅力を増していく気すらします。
■Controller One
変わり種のご紹介。
ターンテーブル、レコードプレーヤーという枠を超え、わかりやすく楽器として踏み込んだプロダクト「Controller One」。過去一番重量のあったDJ用ターンテーブルではないでしょうか。ギター材単板の削り出しによって作られています。信じられない高級感でした。プラッターの周りに設置された小さなボタンそれぞれに回転数をプリセットされており、“ピーーー”という連続音が収録されたレコードを再生してボタンを押すことで、音階を奏でられるというものでした。当時VestaxしかありえなかったULTRA PITCHの技術があってこそ生まれた製品です。
■FADER BOARD
こちらも“ザ・変わり種”。SHING02との共同開発で生まれたフェーダーで演奏する「FADER BOARD」。DJ機材というよりはライブパフォーマンス機材ですね。とにかく動画を見てください。こんな独創的な楽器はこれが最初で最後だと思います。今見て欲しいと思う方もたくさんいると思います。Vestax史上最も独創的でVestaxらしい機材と言えるんじゃないでしょうか。
■S-1
Vestaxの中でも私が一番度肝を抜かれた製品がこちらの「S-1」。ギター型のターンテーブルです。色々調べてみたんですが情報が無さすぎて、CDを入れられたのか、SDカードのようなメディアを入れられたのか覚えがありません。ネックのところにあるフェーダーで音をカットし、本体中央のプラッターでスクラッチが出来ます。一度OTAIRECORDにも実物がやってきて、恐る恐るみんなで触った記憶もありますし、あの誰もが知る著名ギタリストがライブの演出で使ったという話も聞いた気が・・・。(ごめんなさい、少し曖昧です)
以上、まだまだたくさんのプロダクトが存在しますが、きりがないのでここで止めておきます。
本当にきりがないです。。。
振り返ってみて改めて思うことは、本当に僅かな可能性にも全力で開発に向けたVestaxの底知れぬパワーは、今もOTAIRECORDの力の源になっているということ。
Vestaxがあったからこそと言っても過言ではないほどに、どのDJギアブランドもVestaxの背中を追いかけていたでしょう。
“DJ”と共に生きている皆さんの中にはVestaxを知らない方も多いと思います。
興味のある方は是非Vestaxの数々の名機を調べてみてください。
■その他のOTAIRECORDのVestax関連ページ紹介
→中古品在庫がある際に表示しているページですが、PDXシリーズの魅力をご紹介しています。
→Rシリーズをはじめ高級なアナログロータリーミキサーをVestaxの方にインタビュー形式でご紹介しています。
→「皆さんのDJブース見せてください!」と、自分の城とも言えるこだわりのDJブース写真を投稿していただく企画。5回目となったタイミングでVestaxにメインスポンサーとなっていただきました。この前にも後にも開催している企画ですが、この回はVestax製品が多かったと思います。
お読みいただきありがとうございました。