AIRTIGHT/プリアンプ/ATC-5

AIRTIGHTのプリアンプ、ATC-5

レコードのイコライザーカーブを補正し、増幅やトーン/左右の バランスコントロールを担う重要な存在であるコントロールアンプ。 しかしCDの普及以降現れた「伝送経路がシンプルであるほど 音は良い」という発想から、一部ではその存在に対して必要性 を疑問視する流れも生まれました。
しかし、構成するオーディオ機器を単純に減らすだけで、音楽は 感動的なものになるのでしょうか。もし「シンプルこそがすべて」 であれば、オーディオを楽しむという文化は、戦後から永きに 渡る歴史を刻むことができたでしょうか。そして、コントロール アンプが今もなおオーディオファイルのシステムに組み込まれ続 けているその理由は？
オーディオにおける「音楽再生」とは、記録された電気信号を 物理法則に基づいて処理する「テクノロジー」に加えて、音楽 の持つ情緒や感動を表現する「アート」の領域をも要求される もの。この相反する両者のせめぎ合いの中から最適解を得る ことが重要であり、そのためには理論が無くては達成できず、 しかし理論だけでは深い感動を生み出すことはできません。
「テクノロジー」と「アート」が理想的に掛け合わされることで、アナログレコードの微細な信号や、CDやデータ配信などのデジタル信号が、目も眩む「音楽」へと昇華する――そんな、オーディオの無限の可能性を秘めたこのプロセスを最も堪能できる機器こそ、実はコントロールアンプなのです。
真空管アンプブランド・エアータイトにとってのコントロールアンプの開発とは、この「テクノロジー」と「アート」の境界から答えを導き出すための試聴と改善に、時間を惜しまず取り組むことです。
それは1987年発表の初代コントロールアンプ「ATC-1」から今に至るまで変わりません。なぜならそれが、オーディオファイルの夢や理想に一歩でも近づこうとする行為であり、それこそがオーディオメーカーにとっての醍醐味でもあるからです。
そして、デジタル/アナログソース共に繚乱たる2017年、「妥協のない誠実なものづくり」というエアータイトの流儀に則り、現代に求めうるテクノロジーをコンパクトなボディに凝縮した、新たなコントロールアンプ「ATC-5」を完成させました。

デジタルソースもアナログレコードも

アナログレコードを十分に堪能していただくため、 ATC-5は、正確なRIAAカーブを得るための回路 構成として、2段NF-CR型を採用しました。高域と 低域の干渉を断ち切り、さらに不要な低域をカット することでスピーカーコーンの不要振幅を低減する ように設計されています。
単純なNF型では到達しにくい高精度な音楽再生 を実現。また、より快適に鑑賞していただくために、 レコードの掛け替え時に便利な出力ミューティング スイッチを装備しました。
デジタルソースも、CD/SACD/ハイレゾリューション 音源等の音声ファイルと多岐にわたることを考慮 し、ライン入力を3系統ご用意。ソースの持ち味を より瑞々しく響かせるエアータイトの真空管コント ロールアンプは、あらゆる音楽ソフトを存分にお楽 しみいただけます。
また、電源投入時にはタイマーリレーにより出力段 をミュートし、本機の電源立ち上がり時の過渡電流 からパワーアンプを保護します。

サイズを超えたサウンドステージ

フロントパネルのデザインはエアータイトのスリムな 薄型フォルムを踏襲しながらも、全体サイズはさらに コンパクトに。なおかつ、音質面ではエアータイトの 30年を超えるプリアンプ開発の技術やノウハウを 凝縮した、過去最高のクオリティを誇ります。
ラインアンプ部は12AT7を用いたオーソドックスな 2段構成。各ステージには厳重なデカップリング回路 を最適位置に配置することで、各部の干渉を極力 抑えました。これによって、彫が深く、開放感のある 音楽表現となっております。
増幅部は、PCボードを用いず、エアータイトの職人 技が光る手配線によって、純銅の上に一つ一つの パーツを丁寧に配線。増幅回路をつかさどるCRは 世界最水準の温度特性を有する箔抵抗や音響 用抵抗、音響用高級PPフィルムコンデンサーと、 厳選された最高水準のパーツを適材適所に採用 しています。この純銅製の基板を保持し、真空管 ソケット等の機構パーツを取り付けているインナー シャーシは、音質上の観点から敢えて1.0ｍｍという 比較的薄いスティールを使用。この響きやすい構造 のインナーシャ−シを、高剛性のメインシャーシに スタッドボスによる釣り構造で強固に取り付けました。
そのメインシャーシは、1.6ｍｍの肉厚スティールの モノコック構造。エアータイトの伝統ともいえるこの モノコックシャーシを、メタリック塗装で底板含めて 丹念に仕上げました。プリアンプの音質を大きく左右 するボリュームには、アルプス社の黄銅削り出し ケースを使用した金メッキ多接点ワイヤブラシタイプ を贅沢に標準搭載しています。
ATC-5は、このような虚飾を排した質実な設計 によって、コンパクトなボディを凌駕する、広大な スケールのサウンドを体感していただけます。

SPEC

• 使用真空管
  フォノイコライザー部： 12AX7×3本
  ラインアンプ部： 12AT7×2本
• フォノイコライザー入力
  RCA/MM×2系統
  入力インピーダンス： 47ｋΩ（利得40dB）
• フォノイコライザー出力
  RCA×1
  出力インピーダンス： （推奨負荷47ｋΩ以上）
• ライン入力
  RCA×3系統
  入力インピーダンス： 47kΩ（利得18dB）
• ライン出力： RCA×2系統（推奨負荷47kΩ以上）
• 出力電圧： 20V（負荷100ｋΩ/１%歪）
• 歪率ラインアンプ部THD：-0.02%（1V/1kHz）
• 周波数特性
  フォノイコライザー部： 50Hz〜20kHz（± 0.2dB）/20Hz-2.5dB
  ラインアンプ部： （20Hz〜100kHz-1dB）
• 消費電力：50VA
• 外形寸法：約W400×D260×H90ｍｍ
• 重量：約9kg