=calm氏
=OTAIRECORDようすけ管理人
-第2章-「パーティを追求する」
本当にいい音って、ボリュームを絞っても痩せないじゃないですか。
calmさんのDJを聞いてそれをあらためて感じたんですけど、昨日自分はDJブースにはりついてたと思うんですけど、ボリュームのメーターを別で付けられてて、音のほうも結構、通常よりもちょっと低めな感じで、結構会話がしやすいような感じでセッティングをされてたと思うんですけど、それでも音が弱いと全然感じなかったです。
特にアナログはそうだったと思いますね。CDとかパソコンは、解像度が良くないじゃないですかアナログに比べて。
だから音量を上げざるを得ないですよね。でも、アナログはそこまで上げなくていいんで。
でも、井上薫さんはCDとかデータだったんで、その中間をうまく取れるようにはしたんですけど。
だから間に真空管のラインアンプを通したりとかして、デジタル臭さをちょっと中和したり。
DJブースの下に置いてあったものですね。
ちょっとアナログ臭さを足すように、あのミキサーにしても、CDデータにしても、ちょっといい具合にアナログっぽい音にできるように。
いや、もう本当に自分も2時ぐらいにCalmさんに「あした仕事だから失礼します」って言ったんですけど、結局4時ぐらいまで居ちゃったんです。
そうっすよね。あれまだ居るなって思って。
帰るに帰れなかったっていう、いつまででも居たいような気持ちいい空間っていう。
もちろん、前提で選曲が素晴らしいなと思ったんですけど、この場に居たいって思わされたのは、やっぱり音質とか、作られた空気感だとか。それは最近のDJシーンでは、なかなか見ないことだったので、すごく新鮮でした。
昔からそうかもしれないですけど、昔はほっといても人が入ってたけど、今はほっといたら人が入らないで、単純にDJの発表会みたいになっちゃっていて。
パーティーを作るじゃなくて、DJをちょっと外でやりたいからやるという感じで。
しかも、もう今、簡単にできるから、DJを6人集めて、1人が10人ずつ呼んで60人のお客さんが来ればそれでいい。
そういう発表会ばっかりをずっとやってきているような気がするんですよ。
安易に外タレを入れてっていう、そういうことばかりをずっとやり続けて音やパーティの中身はおいてきぼりで。
ドンドン音も悪くなっていくし、もうひどい音で、一晩そんなところにいてもつまんないよ、みたいになっちゃってくるから、人はドンドン少なくなってきていると思うんですけど。
でもうちは、やっぱそういうんじゃなくて「パーティー」をやりたいので、音が良いとかは、もう多分俺は、当然のことだと思ってるんですよ。
当たり前のことっていうか。そこがいいとか、選曲がいいとか、もうそういうのは当たり前で、それ以外の部分、なんかオーガナイザーだったり、箱の人たち、デコをやってくれたり、昨日だとたこ焼き出してくれたり、そういうのもスタッフとか全員含めてパーティーなんで、ただ、そこを追求していけば、やっぱりみんなのクオリティーも上がんなきゃいけないし、自分自身のも上げなきゃいけない。
だから昨日は多分、それが総合的によく出ていたんだと思うんですけどね。
はい。かなり気持ちいい空間でした。
逆にだから、そういうもののフィードバックしてまたDJにも返ってくるんで、その雰囲気をDJがまた出すというか。
ドンドンらせん状に上がっていくみたいな。
そうですね。DJとオーディエンスの関係はどちらが上とかじゃないんですよね。
相乗効果っていうか。音作りに協力とか、デコを協力、そういう人たちがいてくれることによって、こちらもとテンションも上がるし、イベントの運営側もそういう気持ちでウェルカムって迎えてくれるし。
だから全部そういうもののフィードバック、フィードバック。
プレーが始まるとお客さんとの対話で。だから、お客さんがどうもただ観光で来ているような人たちの前でやると、やっぱりフィードバックがないんでドンドン自分としてもプレーは厳しくなっていく場合もあります。
はい。
ポジティブに単純に音楽を楽しもうと来ている人たちの中だと、すごく昨日みたいに作用するっていうか。
ただ、なんかもう固いテクノで踊りたいのにっていう人たちしかいないときだと、結構、難しかったりするんですよね。
「あれかけてくれ。これかけてくれ」って。でも、選曲できるのは、持ってきているものに限られてるから、「その中できょうのベストを自分がやるから、それに付いて来てください」って言って、付いて来てくれたら、こっちも「じゃ、ありがとう」ってお礼をして、向こうがまた「ありがとう」って来るし。
じゃ、それだったらもう一回これかけてなるんです。そういうのが相乗効果なんで。良い時は、それがブワーって積み重なって。
もうすごいところまで行っちゃうみたいな。
人数が何人とか関係なくてすごいとこまで行けるので、やっぱそういうのを体験してしまうと、たとえ何万人を躍らせたとしても、
それで自分はかけたくない曲をプレイしてもつまらないというか、それはただ単にその一瞬をその人達が楽しむだけで終わってしまうんです。
つながっていかない。
次の世界に行けないというか。
多分ビジネスとして必要なことだし、自分もそういう場所に出演したりもするので、すべてを否定しているわけではないんですけど。
はい。
自分は、最終的には「パーティ」というのをやりたいんで、例えばオーディエンスが何万人もいればドンドン選曲も水で薄めていかなきゃいけないであろうし。
そうなってくると、自分がそういうキャッチーな音楽を好きであるんだったら、そういう場所でできると思います。
しかし、自分は別にそういう音楽じゃなくて、いろんな音楽の中でも自分の基準の素晴らしいと思う方をかけたいので。
まあ、そういう場がかけれる場所を作れれば、そこに20人だろうが100人だろうが、入れればOKで。何万人もいらないっていう、何千人も別にいらないって感じです。
最終的にはオーディエンスが増えてくれれば、一番いいですけど。
ただ、最初からそこを求めてしまうとダメだと思います。
こちらでを基準を作っておいて、それに合うオーディエンスを少しづつを増やしていくという感じにできたらいいなと思うんですよね。
本日のインタビューは冒頭で、「高音質でDJをやる」みたいなテーマでお話しをお伺いしたいと申し上げました。
しかし、その事はcalmさんがおっしゃっられる本当にいいパーティーを作るための土台というか、最低限って言ったら変ですけど、その一環にすぎないということですよね。
音にもこだわって、極上の空間を提供して、それも含めて、会場の雰囲気を盛り上げるデコレーションとかサウンド周りのスタッフだとか、
勿論お客さんを含めて、ドンドン相乗効果で高めていくっていくようなところが大切なんですね。
パーティーの一部でしかないというか。だから地方とか行っても、未だに自分よりこいつ良いDJしてるな、という人、
いっぱいいるんですけど、でも、なんかやっぱりパーティーとしてまとまってない事が多いんですよね。
本当もったいないなあっていつも思う。
自分のDJのプレーの事しか考えてないというか、「一生懸命練習したことをやる」ということしか考えてなくて。
そういう人たちが5、6人集まってパーティーをやってるんで。
レストランに例えて、自分はシェフだとします。
そのシェフが、どういう料理を作るかっていうことです。
イタリアンなのかフレンチなのか。自分の場合は多国籍料理だと思うんです。
もう自分は全世界のおいしいものそろえてるって思っているんです、その中での素材選びをやっている感覚。
そこの辺のスーパーで買ってきた肉を使うのか、どっかの仕入れて業者から入れるのか。
また、自分から行って、オーガニックのすごくいい野菜をそろえるのか。そういうのを集めてくるのが自分。
それを使ってどう料理をするのかって。その料理をする厨房機器、包丁とかがDJに置いてはターンテーブルだったり、針であったり。
ああ、なるほどですね。分かりやすい。
でもそうやって、そこそこおいしいねって料理を作る人は、だからシェフが6人はいるんだけど、
結局ホールスタッフが駄目、マネージャーが駄目、部屋は汚い、掃除されてないとか、そうなるとどんなにおいしい料理を作る人がいても、
結局、経営はできていかないと思うんですよね。
ドンドンなんか広まっていかないっていうか。
だからそこはフレンチとかって、もう高級フレンチで打ち出してるんだったら、お客さんも選びやすいと思うんですけど、
そこで「多国籍料理のおいしいもの」って言われても「うーん」ってなって、メニュー見ても「いやこれ食べたことない。なんだろう」みたいな。
でもそこで、「まあうちは、この料理はこうなんですよ」って説明してくれるフロアスタッフであったり、マネージャー、ドリンクを作る人、
ちゃんと掃除する人とかっていると、その店はきちっと繁盛するっていうか、と信じてやっているんです。
パーティってトータル的なものだっていう事ですね。
なんか先ほどクラブバブルの時代っていうのがあって、有名な人が来たらもうドンドンお客さんも勝手に入っちゃってみたいな、そういう時代が確かにあったと思うんですね。
最近、これはまあ誤解を恐れずに言うんですけど、DJって昔は格好いいだとか、すごいだとか、なんかそういうふうに、そういうイメージが結構あったと思うんですね。
なんか「DJやってます」って言ったら「あ、すごいですね」みたいな。だけど、結局は、すごくもなんともないんだっていう風になっちゃっている気がします。
例えばシェフだったらお客さんと対話ができるのかとか、精神的な部分も含めてそういうレベルが要求されてきている。
それがクラブバブルの当時と決定的に変わったんじゃないかという風に思います。
そうですね。昔は確かにターンテーブル買ってミキサー買って、かつレコード買ってってやらないとDJって始められなかったから、
そこでまず門をたたく人と、たたかない人って出てくると思うんですけど、今って、コンピューター1台あれば、要は言ってしまえば、
違法ダウンロードの音源を使うこともできるわけじゃないですか。
そうですね。
インターフェースもなくても、下手すりゃできるじゃないですか。
ああ、できますね。(笑)
なんちゃってというか。そこでDJの敷居がすごく下がって、誰でもDJができるから、自分自身は今もうDJって呼ばれたくないって思っているんです。
いわゆる既存の概念でいう今の人たちが考えるDJとやっていることが違ってきている思うので。
なるほど、はい。
あれは、あくまでもホームパーティーというか、仲間内4、5人でやるということが、今、簡単にそのクラブを借りさえすればできるので。
それ自体がやっぱりクラブシーンを駄目にしている要因の一つだと思うんですね。
だからそういう子たちが、昔みたいにもうちょっと何かこだわりを持ってくれれば、別に音質やプレイが良ければいいって問題でもないんですけど、何かもうちょっと違う魅力を出していって欲しい。
DJがブームになったころからすると今の世代は、ニュージェネレーションになってきていると思います。
その世代のパーティーの新しいスタイルを見せて欲しいと思っています。
その別にもうパソコン使ってでもなんでもいいんですけど。
昔の既存の概念のクラブとかDJバーの中に無理やりそれを押し込むじゃなくて、
自分達でなにか新しいことをやればいい。
パソコンやモバイル使っちゃえば手軽にどこででもできるわけですし。
ちょっと違う方向にそういう人たちが考えてくれれば、例えば自分達は自分達で住み分けがもっとできて、見た目も分かりやすくなる。
これからシーンを作っていく人達に、一概に音質にこだわれ、とかそういうことだけではなくて、差別化だとか、どうせ音楽やるんだったらその楽しみ方を一生懸命考えて欲しい、と。既存のフォーマットに乗っかるんじゃなくて。
自分で新しい遊び方を作れば、別にそれは音が良くなくても楽しめるだろうし。
楽しいもんは楽しいですからね。
うん。でも今はもうクラブ行ったら音が悪いっていうイメージしかついてなくて、実際そういう状況になっている場所も少なくないので、それが嫌なんですね。
クラブでDJでってなると、今はもう「ああ、DJね」みたいな。昔だったら「おお、DJやってるんですか」って感じだったんですけど。多分それが大きな違いなんだと思うんですけど。
昔とのずれというかギャップが出て来て、新しいものが生まれつつあるみたいな。
「生まれてほしい」っていう。あまり生まれてないので。
だから、レコードではできないすごい技とか、そういう物を使った新しいパフォーマンスでもいいですけど、そういった違う道に行ってくれるか、もしくはちゃんとデータ化するときに気持ちを込めて、きれいな音でデータ化したものをプレーするとか、その音にケーブル一つにしてもこだわったり。
デジタル音源でもこだわれば音質は良くなるじゃないですか。
そうですね。
ファイルでプレイするのだったら、WAVのちょっとハイビットなやつを、CDだったらちゃんと買ってそれをかけるっていう。
そういう細かいこだわりをやってくれるか、もしくは全く違うことをやってくれるか、どっちかにしてほしいなあとは思ってるんですけど。
せっかくやるんだったらみたいなところですよね。
うんうん。もったいないと思いますよ。それ多分、自分たちが一番損してると思うんですよ。
そういうのやってる人達って。それを認めてるクラブや店側もやっぱり良くないと思うし。
「人が入らない、入らない」って言って、ただ嘆いているだけで何もしないというか。